不妊治療のQ&Aブログ

by 松本レディースクリニック 不妊センター

Q. 孵化補助ってなんのためにするものですか? 孵化補助をした方が妊娠率は上がりますか?

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  今日は少々、専門的な内容のお話になります。まずは孵化補助とはなにかというところからご説明します。

孵化補助(アシステッドハッチング)とは?

孵化補助(アシステッドハッチング)とは、人工的に透明帯に切れ目を入れて、細胞が透明帯の外に脱出しやすいように補助する技術です。

胚は、胚盤胞という段階まで発育すると、どんどん拡張してその大きさを増していきます。それに引き伸ばされる形で透明帯は薄くなり、破綻して、その切れ目から細胞(将来赤ちゃんになる部分と胎盤になる部分)が外に脱出します。これを孵化と言いますが、この孵化がうまくいかず脱出に失敗すると、着床することができません。

ここまでのお話だと せっかくの胚盤胞が透明帯のせいで着床できないなんて…。 透明帯なんてないほうがいいのでは? なんてお思いになるかもしれません。では、そもそも『透明帯』とは何なのか、何のためにあるのか、についてお話しします。

■透明帯の役割

透明帯は、卵子の細胞質の外側を覆っている糖タンパク質でできた膜です。その役割は、さまざまですが、

1. 卵巣内では、卵子の発育に必要な栄養素を、外側から内側に受け渡す役割
 *この発育がうまくいかないと受精の準備ができず、次のステージに進むことができません。

2. ひとつの精子卵子内に入ったら、構造を変化させることで、それ以上の精子の侵入を防ぐ、多精子受精防止の役割
 *2つ以上の精子が侵入してしまうと染色体が異常となってしまいます。

3. 細胞の分割が始まった頃の初期の胚は、ひとつひとつの細胞がくっついておらずバラバラになりやすいので、それを囲みまとめる役割
 *バラバラでは、細胞同士が、さあ、くっつき始めましょう、というときにくっつくことができず、その後の、赤ちゃんになるか胎盤になるか役割を決めましょう、という段階に進むことができません。

4. 卵管で受精した胚が、着床の場である子宮に移動してくる道中、目的地以外に付着するのを防ぐ役割
 *卵管の壁に付着してしまうと、正常な妊娠ではなくなってしまいます。

といったものが挙げられます。

 

■孵化補助(アシステッドハッチング)の有効性は?

前提として、自身の力で脱出できる胚なのかそうでないのかを事前に調べることはできません。なので、それぞれの胚について、孵化補助の有効性を確認することはできません。

けれども、私たち胚培養士が日々患者様の胚を扱う中で、透明帯が堅い、柔らかいと感じることは多々あります。また、年齢上昇による硬化や肥厚、凍結と融解、液体窒素での凍結保存による硬化、などは多く報告されています。

脱出ができないこと(孵化障害)が直接的な原因で着床できない、ということは、パーセンテージとしては高くはないのかもしれません。けれども、もし患者様の移植するその胚が、補助なくして脱出できない胚であるならば、孵化補助は妊娠に結びつけるための有効な方法である、と言えると思います。    

また、孵化補助にデメリットがあるかということに関しては、胚盤胞での移植に限って言えば、その役割は移植の時点では不要になっているものがほとんどですから、孵化補助(アシステッドハッチング)をするデメリットはほぼ無いと言っていいでしょう。

 

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