Q. 受精を促すというカルシウムイオノフォアとはなんですか?
Q. 7個の成熟卵子に顕微授精をしてもらいました。スイムアップ法で集めた精子の状態は良好というお話だったのですが、受精したのは2個だけでした。次に顕微授精をする際は、「受精を促すために、カルシウムイオノフォアを使いましょう」とのお話を受けました。カルシウムイオノフォアについて教えてください。
A. 成熟卵子に顕微授精を行っても受精が成立しない場合、考えられるのは受精障害です。その原因の一つとして、卵子活性化障害が考えられます。
まずは、顕微授精ではない、通常の受精の場合のメカニズムについてご説明します。
受精のメカニズム
受精前の成熟卵子は、減数分裂の停止状態にあります。精子は卵子に到達すると、卵子の透明帯(細胞の周りに在る殻)を破り、内側にある細胞質に到達します。
そのとき、精子側から活性化を誘発する物質が分泌され、その働きかけを受けた卵子内の小胞体は、カルシウムイオンを放出します。放出されたカルシウムイオンが更なるカルシウムイオンの放出を招き、卵細胞質内で連鎖的にどんどん増えていきます。このカルシウムイオン濃度の上昇を受け、卵子の停止状態は解除され、受精へのステップが開始します。
この一連の流れが「卵子活性化」であり、受精の成立のためにとても重要であることが分かっています。
顕微授精で受精が成立しない場合…
さて、では今回のケースで、なぜ受精が成立しなかったのか原因を考えてみます。
まず、顕微授精では精子が卵細胞質内に入っていることが前提なので、精子が透明帯を通過できないことが原因の受精障害ではありません。
とするとまず考えられるのは、卵子の活性化が不十分なために起こる受精障害です。
精子が卵子活性化を促す物質を持っていない、または本来のステップが顕微授精によってバイパスされるため働きかけが小さく、卵子がそれに反応できずに、十分なカルシウムイオン濃度に達せず受精に至らない、などが考えられます。
「スイムアップ後の精子の状態は良好」という部分についてですが、精子濃度や運動性は十分だったのだと思います。しかし、この活性化に関する部分については、運動性や形態の正常性からも判断することはできません。
卵子活性を促すために
卵子活性を人為的に促す方法はいくつかありますが、そのひとつがカルシウムイオノフォアという薬剤に入れる方法です。顕微授精直後の卵子を一定時間カルシウムイオノフォアに漬けることで、細胞外のカルシウムイオンを卵細胞内へ拡散させます。
外からの働きかけによりカルシウムイオン濃度を上昇させ、卵子の減数分裂の再開を、そして受精へと導くのがカルシウムイオノフォアの役割です。受精障害の原因が卵子活性化障害であった場合には、有効な方法であると言えます。
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