不妊治療のQ&Aブログ

by 松本レディースクリニック 不妊センター

Q. 顕微授精や体外受精での異常受精はなぜ起きるのでしょうか。

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顕微授精、体外受精を施行後、18時間前後で受精確認を行います。

正常受精であればこの時間帯に、2個の前核(PN、それぞれ卵子由来のもの、精子由来のもの)、2個の極体(PB、ひとつは成熟卵子にあり、ひとつは精子が卵細胞質に侵入した後に放出される)が観察できるはずです。

 

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            2PN2PB

 

多前核胚になるケース

この観察の際に、前核が3個以上見えることがあります。これが多前核胚といわれる異常受精です。

多前核胚の原因として考えられることは、2個以上の精子が卵細胞質に侵入してしまった、精子の侵入は1個だったが卵細胞質から放出されるべき第2極体が放出されず卵細胞質内に残ってしまった、また侵入した精子または卵子自身がもともと2倍の染色体を持つ異常精子や異常卵子だった、などが考えられます。

このような胚は、分割したとしても染色体数的異常となってしまい移植胚に用いることはできませんので、受精確認の際に培養の対象から外すこととなります。

 

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   3PN2PB

 

染色体数的異常になるケース

染色体は遺伝情報の発現と伝達を担います。ヒトの精子卵子が持つ基本的な染色体数は23なので、1個の精子と1個の卵子からできたヒト体細胞の染色体数は、2倍の46ということになります。

けれども、例えば1個の卵子と2個の精子が受精した場合には、染色体の総数が69となる受精卵ができることになります。これは3倍体とよばれ、その染色体が担当する物質産生などが通常の1.5倍になってしまい様々な影響を及ぼします。この変化が致死となり、早い時期に流産となってしまうと考えられ、移植胚に用いることは致しません。

 

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松本レディースクリニック 不妊センター

〒170-0013 東京都豊島区東池袋2-60-3 グレイスロータリービル1F

Tel 03-5958-5633 / Fax 03-5958-5635

 

<初診のご案内>

当院は予約制ではありませんので、初診をご希望の方は直接のご来院をお願いいたします。 初診の方の受付時間は、

平日 午前 8:00〜12:00、午後 14:30〜18:00 
土曜日 午前 8:00〜11:00、午後 13:45〜15:00

です。 初診の流れなどの詳細はこちらからご確認ください。

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Q. 良い状態の胚なので期待できるとのことでしたが、一度も着床しません。

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Q.良好胚盤胞の人工周期(ホルモン補充周期)での移植を4回行いました。良い状態の胚なので期待できる、とのことでしたが、一度も着床しません。何かできることはないでしょうか。

 

A.子宮内膜には受精卵を受け入れることができる一定の時期があると考えられています。自然妊娠では、卵子精子は卵管膨大部で受精が成立し、およそ5日かけて卵管内を運ばれて子宮内に到達します。

子宮内膜が受精卵受け入れ可能となるのは、排卵から5日後、卵巣黄体からのプロゲステロンの分泌開始から5日後です。早すぎても遅すぎても受精卵を受け入れることができないと考えられており、同時に受精卵もまた着床可能な発育段階である必要があります。

 

人工周期での移植を4回行ったとのこと。つまりホルモン補充によって、受精卵の発育段階とホルモン値による子宮内膜の時期は一致させている、にも関わらず着床しないとすると、次に提案させて頂きたいのはERA検査です。

 

ERA検査とは

子宮内膜をホルモン値に基づいて着床可能な状態に整えていても、遺伝子レベルでは一致していない可能性があります。遺伝子レベルでの不一致のために受精卵受け入れ不可となる場合が、少ないとはいえ存在することが明らかになってきています。

 

胚の受容性に関わると考えられる238種類の遺伝子を解析し、遺伝子レベルでの受け入れ可能時期が、ホルモン値での受け入れ可能時期と一致しているのかどうか、子宮内膜組織を採取して調べる遺伝子検査がこのERA検査です。

 

たとえば、今までは5日目胚をホルモン値での子宮内膜5日目に移植していたけれど、ERA検査によって7日目が遺伝子レベルでの受容時期だということが分かった、その場合は、従来よりも2日遅い移植日を選択する、ということになります。

 

結果に日数を要しますので、ERA検査を行うホルモン補充周期には移植を行うことができず、また確定に2周期を要する場合もあります。確定後、新たな周期において、検査時と同じホルモン補充を行い、ERA検査の結果に基づいた日程で移植を行います。

 

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患者様からのお便り紹介2

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本日は、Q&Aブログから趣向を変えて、患者様からのお便りをご紹介します。

子宮口が堅く開ききらず、胎児ひん脈になりつつあったので、結果的に帝王切開になってしまいましたが、母子共に健康で出産を終えることができました。

その後の経過も良く、ミルクをよく飲み、よく眠り、今のところ大変順調に育っていると感じます。

長期に渡り、治療を続けて頂けた皆様の支えのおかげで、今の幸せがあると思っています。

本当にありがとうございました。

(Iさんより)

このように患者様からのお声を寄せていただくことはスタッフ一同何よりの喜びです。

みなさまにお力添えができるよう、今後も尽力してまいります。不安なことや疑問点があれば、どうぞお気軽にお声かけくださいませ。

 

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Q. 特定不妊治療費助成制度について教えてください。

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A.不妊治療にまつわる助成制度には、「不妊検査助成制度」や「特定不妊治療費助成制度」があり、各地域によりそれぞれ内容が少しずつ異なります。

今回は、東京都における「特定不妊治療費助成制度」について解説いたします。

 

▼「不妊検査助成制度」についてはこちら

matsumotoladiesclinic.hateblo.jp

 

特定不妊治療費助成制度とは?

不妊検査助成制度と根本的に違うのは、高度生殖医療の治療を受けられた方を対象とした助成金制度であることです。高度生殖医療とは、体外受精もしくは顕微授精を指します。

 

ここで間違えやすいのが、人工授精は高度生殖医療ではないので、対象にはならないということです。こちらは、不妊検査助成制度の対象範囲内です。

 

この制度は、「採卵をすること」が大前提となります。

ただし、採卵へ向けて排卵誘発している途中で、なんらかの理由により治療を中止した場合は対象となりません。採卵処置をしても卵が採れなかった場合は対象となります。

 

他には、収入制限があること、奥様の年齢によって申請回数の制限があること、治療内容により支給金額に差があるということ、領収書のコピーが必要であることなどが挙げられます。

 

助成金の内容

金額は初めてに限り、30万円を上限に助成されます。その後の治療については25万~7万5千円と治療内容で大きく変わってきます。

このあたりは年度により少しずつ変わる部分なので、各自治体のホームページなどの記載をよく確認することをお勧めいたします。 

また、東京都からの助成の他に都内では区、市が助成しているところもあります。東京都からの助成金を受けて、更に区から助成金を受け取ることが可能です。

ただし、23区の中でも制度があるところとないところがあるので、住民票のある自治体にご確認くださいね。

 

助成金の申請方法

申請には数種類の書類を提出するのですが、クリニックで記載する書類は特定不妊治療費助成事業受診証明書の1枚のみです。

治療が終わらなければ記載はできないので、採卵→胚凍結→融解胚移植(胚凍結せず新鮮胚移植)→妊娠判定とすべてが終了した時点で初めて記載可能となります。

妊娠判定が終了の目安となります。ただし、採卵しても移植にいたらなかった場合(卵が採れなかった、受精しなかった等)は、その時点で終了となり記載可能です。

記載には時間がかかります。当院では1週間程度のお時間をいただいています。記載のための日数などはクリニックによりますので、各自確認してください。

 

こちらの制度も上手に利用して、治療に役立ててくださいね。

 

患者様からのお便り紹介1

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本日は、Q&Aブログから趣向を変えて、患者様からのお便りをご紹介します。

 

2018年3月6日 3758gの大きな元気な男の子を無事出産する事ができました。

とても怖がりなため、体外受精をおこないたいけれどなかなか前へ進めずにいましたが、松本レディースクリニックのみなさまがいつも温かく私の気持ちを聞いてくれ、はげましてくださったため、ステップアップすることができ、こうして授かることができたと、とても感謝しております。

こんな幸せな日が来るとは・・・。

子供がとてもかわいくてたまりません。

本当にありがとうございます。

松本レディースクリニックさんを選んで、本当によかったです。

 

 

Sさん、温かいお便りをお寄せくださりありがとうございます。Sさんの頑張りにお力添えできたこと、スタッフ一同とても嬉しく誇らしく思います。 

このように患者様から喜びの声が届くことは私たちの何よりの喜びです。今後も、患者様に寄り添ったお手伝いができるよう尽力してまいります。

Q. 夫が忙しく、AIH(人工授精)の日程を組むのが難しいのですが?

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Q. タイミングから人工授精にステップアップしたいと考えていますが、排卵日に合わせて朝精子をとって持って行く、となると、夫の都合を合わせるのが難しいです。

 

A. 人工授精精子は、凍結保存することができます。ですので、排卵日に関わらず、ご都合のよい日に精子をお持ちいただいて、凍結処理をおこない保管しておく。その後、排卵日に合わせて奥様のみご来院頂いて、保管しておいた精子を融解して人工授精をおこなう、という方法があります。

 

精子の凍結について

凍結の方法については、まず初めに、通常の人工授精の場合と同様に遠心処理をおこない、痛みや感染のリスクともなる不要物を除去し、運動性の高い良好精子を選別して濃縮します。

通常の凍結において細胞が死んでしまう要因は、細胞内の水分が氷となり体積が増大し、細胞が破壊されてしまうためです。精子を凍結する際は、この現象を防ぐために凍結保護剤を用います。これによって細胞の水分を排出させ、氷晶が作られるのを防ぎ、-196℃液体窒素下で生存性を保ちながら半永久的に保存することができます。

 

精子の凍結が難しいケース

凍結精子での人工授精が難しいケースについてお伝えします。それは、精子数が少ない、運動性が低いなどの精子所見不良の場合です。

精子の運動性は、凍結、融解、再濃縮洗浄の過程で、凍結時から見て半減してしまいます。つまり、人工授精時には良好運動精子が半分くらいの数になる、とお考えください。

そのため、人工授精のために精子を凍結する場合、ある程度の運動精子を必要とします。こういったことも検査の過程でわかることですので、医師と相談のうえ進めていきましょう。

 

 

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Tel 03-5958-5633 / Fax 03-5958-5635

<初診のご案内>

当院は予約制ではありませんので、初診をご希望の方は直接のご来院をお願いいたします。 初診の方の受付時間は、

平日 午前 8:00〜12:00、午後 14:30〜18:00

土曜日 午前 8:00〜11:00、午後 13:45〜15:00 です。

初診の流れなどの詳細はこちらからご確認ください。

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Q. 二段階胚移植について教えてください。

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Q. 前回の採卵で良好胚盤胞を3つ凍結することができ、一周期にひとつずつ、3回移植をおこないましたが、どれも着床しませんでした。グレードもよいものばかりだったので、多胎のリスクを考え、2個移植はおこなわなかったのですが、次の採卵・移植では、二段階胚移植をしたいと考えています。多胎のリスクも含め、二段階胚移植について教えてください。

 

二段階胚移植とは

A. 二段階胚移植とは、予め凍結しておいた受精3日目胚と胚盤胞を、移植周期の排卵3日目と5日目の2日に分けて、それぞれ一個ずつ移植する方法です。

同一周期で2個の胚を移植することになりますので、多胎のリスクは2個移植と同じです。したがって、35歳以上の患者さま、複数回の移植で一度も着床しなかった患者さまに用いることができる方法、ということになります。

 

通常、精子卵子は卵管の中で受精し、受精した卵子(胚)は、成長しながら5日ほどかけて子宮に移動していきます。その移動中の数日間に、胚は子宮内膜へ信号を送ります。その信号を受け取った子宮内膜は、数日かけて胚を受け入れる状態に変化することが明らかになってきています。

体外受精では、受精から移植まで、培養庫の中で育てられるので、胚はその信号を子宮内膜に送ることができません。子宮内膜の受け入れ態勢が不十分なために着床できない胚もあるのではないか、という考えに基づいて考案されたのが、二段階胚移植法です。

 

移植周期の3日目に初期分割胚を移植することで、子宮内膜の受け入れ態勢を誘導した上で5日目に胚盤胞を移植し、胚盤胞の着床の可能性をより高いものすることを目的としています。少なくとも2つ、初期胚と胚盤胞の凍結が必要となりますので、排卵誘発の段階からご相談いただいて、計画的に胚凍結をおこなう必要があります。

 

受精3日目に胚評価をおこない、いずれかを凍結しますが、通常はある程度の発育が見込めるグレード3以上のものを選び凍結します。そして残った胚を継続して培養し、5日目に良好胚盤胞を凍結する、という流れになりますので、3日目胚は凍結できたけれども、残りの胚の発育が不良で胚盤胞は凍結できなかった、ということも起こりえます。そういった状況も考慮の上ご計画、ご相談いただければと思います。

 

また、すでに3日目、胚盤胞の凍結胚をお持ちで、二段階で移植したい、という患者様につきましては、移植周期に合わせてご相談下さい。